爺の登山小史 No48
見上げる摩天崖は思った以上にでかい。前日から下部にルート開拓中の仲間に合流する。最初の70m程は扇状地というか、土砂の堆積斜面を簡単に登れる。そこから登攀がスタートするのだ。1P目は割合堅い岩でピトンも良く効く。2P目、以前の残置ピトンやボルトを利用してテラスへ。海抜140m位か?ここからの100mが未知の世界だ。壁は垂直、やや被り気味。岩が極端に脆くなってくる。直登を試みるが、経験した事の無いボロボロ壁に手を焼く。ジャンピングでボルトの穴を開けると、普通10~15分掛かる所が、30秒ほどで開いてしまう。岩と言うより泥です。10mほど登ると神経が磨り減る。眼下に広がる日本海に向かって、いつ大ジャンプになっても不思議じゃない。いったんテラスに下降し作戦の練り直しだ。俺は直上するより、左に振って上部の小ハングを迂回する方がまだ可能性のカケラくらいはある、と判断する。夏の日差しと緊張で疲れきって、後をまかせて海岸まで下り一休みする。再びユマーリングで登って見ると、残ったメンバーは何の行動もしていなかった。メンバー同士のチームワークの欠如が露呈してしまった。ガッカリして急に壁にたいする興味が褪せてきた。今回は浦郷の民宿をベースにして、岩場に通う計画だったので、陽が傾き始めたのを理由に壁を下る。所が海は大荒れになり、迎えの船が接岸できない。水も食料も無いまま、崖下の岩の上で横になって夜を明かした。摩天崖は飛び降り自殺の名所で、海岸の藪の中には発見されない白骨がゴロゴロしていると聞いていた。気持ちの悪い夜が明けたが、海は相変わらず波が高い。やっと迎えに来た船は沖合い100mくらいで停泊して岸に近寄れない。我々は全ての装備や服を棄てて、パンツ一枚で荒れた海を船に向かって泳いだ。
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今では記憶もあいまいだが、摩天崖正面壁登攀の可能性について聞かれたら何ともいえない。何か新兵器を開発すれば、人工登攀100%で少しは見込みがあるかも?俺は全く興味は無いが。 壁の隅の方のルンゼは過去、広島や米子の人達によって登られている。正面は未登です。
by kikunobu111 | 2009-01-26 15:52 | ・爺の登山小史
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