爺の登山小史 No33
この年の後半は、大山北壁、滝沢を登ったり、ゲレンデの岩登りくらいで、ちょっと低迷してた。私生活で色々あったので。正月は単独で槍尾根~船上山縦走に向かい鳥越峠でツエルトビバーク。降雪は夜中にザーザー降りの雨となり、寝袋も衣類もグショ濡れで、翌日は縦走を諦め、烏ガ山を往復。頂上直下のトラバースは雪壁となって悪く、ピッケルで足場を削りながら突破する。そして2月11日、またまた大屏風岩に挑戦。難しい正面カンテルートだ。取り付きまでは腹まで埋まるラッセル。1ピッチ目、Y君がリード。しんがりの俺はノービレイで駆け上がる。鏡岩トラバースは俺がリード。夏とは違うラインを登る。2~3箇所微妙なバランスを要す。ザッテルからトップでカンテに向かう。最初の6~7mはフリークライム。登攀の感覚を取り戻したのか、不安感無く高度を稼ぐ。A1の人工に入ると、途端にペースが落ちた。アイゼンバンドの結び目にアブミのヒモが引っかかり、イライラする。ロープ一杯登って、アブミの上で確保、後続を上げる。吹雪で視界の悪い中、Y君がトップを受け持つ。カンテを回り込んで見えなくなるが、ロープが伸びて行かない。吹雪の中から、y君の悲鳴が聞こえる。彼の姿が見える所まで攀じる。上部を見ると、ルートが崩壊している。ハングも倍くらい大きくなってる。ワナに嵌った我々。一刻も早く下降しないといけない。終了点まで後20mしか無いのだが。俺がクライムダウンで下の確保点まで戻り、YとSZがラッペルを試みるが、壁全体がハングしている為、空中に揺れる体が俺の所まで届かない。全くアイガー北壁のトニー・クルツとおんなじ状態だ。
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夕暮れが近づいている。パートナーに手が届き、壁に引き寄せる。やっとの思いで、3人ザッテルに合流したが、鏡岩の逆トラバースはギリギリのバランスを要求された。雪に覆われたバンドを斜めに下りて行くのだが、激しいランナウトが続く。落ちるなら落ちろと半ばヤケクソで進む。最後はラッペルで取り付きへ。暗くなった大ガレを尻セードで一気に下降。この時のパートナーSZ君は数年後、突然の病で他界した。
by kikunobu111 | 2008-07-26 17:29 | ・爺の登山小史
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