爺の登山小史 No54
この年の8月、再び奥鐘山西壁を目指して、炎天下の黒部川の水平歩道をM君と二人で辿った。今回は志合谷を下降するアプローチをとったが、非常に悪く、懸垂下降や不安定な雪渓下りに手こずり、やはり黒部本流をジャブジャブ行くのが正解と解った。暗くなる頃、河原に降り立ち、早速ツエルトを張る。
8/13 7時に出発。本流の浅い所を渡渉し「中央ルンゼ」を目指す。草付きのスラブを慎重に150mほど登り、アンザイレン。今回のパートナーM君とは長い付き合いで、仁摩の竜岩山にルートを開いたザイル仲間だ。岩登り以外に筋金入りのボデイビルダーで凄い体をしていた。4ピッチで「クサビの切れ目」。先行パーテイは苦労していたが、思ったより楽に突破。なんせ我々はフラットソールのクライミングシューズを履いてる。出来るだけフリーで登るようにする。次の難関「V角」。A1の人工だが、ハング出口にラープが一本打ってあるだけ。これにアブミを掛けてぶら下る時は、冷や汗が出た。その上のピッチには振り子トラバースが出てくる。今はそれらのピッチは全てフリー化されている。目に眩い白く硬い花崗岩のクライミングが続く。途中間違いのボルトラインに入ってしまい、袋小路に追い込まれる。必死でジャンピング作業をする。岩が硬くボルト一本埋めるのに、30分かかった。真夏の陽射しに照らされ、次第に体力を消耗する。Mにトップを譲り、荷物運びを受け持つ。水も殆ど底を突き、遥か下に糸のように光る黒部川が恨めしい。長いルートもやっと終盤。最後のピッチをトップで行く、が、疲れていて力が出ない。核心部で落ちそうになり、一か八かデッドポイントで手を飛ばしたらガバだった。二人が下部岩壁終了点のテラスで合流したのは、午後5時だった。
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休むことなく下降にかかる。スムースなラッペリングが続き、暗くなる頃「クサビの切れ目」に着く。その下は暗くてラッペルの支点が見つからない。ロープにぶら下ったまま左右に岩壁を走る。結局支点は自分で作るしかない。ヘッドランプの明かりで、ボルトを埋めたり、浮石にハーケンを何本も叩き込む作業が延々と続く。渇いた体に、暗闇から聞こえる黒部川の水音が恨めしい。ロープに宙吊りの靴底が河原の石に触れたのは午後9時だった。水際に飛んで行き蛙の腹みたいになるまで、水を飲む。
8/14 本当は下ノ廊下を辿り、丸山東壁に継続するプランだったが、お互い疲れ切っていたので、黒部本流での岩魚釣りに変更。ウジャウジャいる川虫を餌に竿を伸ばすと、すぐに尺岩魚が掛かった。岩壁を登るクライマーを眺めながら、岩魚の塩焼きと冷酒に舌鼓を打つ。午後雨が降り出したので、慌ててパッキングをし、増水に怯えながらも、志合谷を登るよりましと、本流をザブザブ欅平へ下る。 ★奥鐘山西壁「中央ルンゼ」は良いルートです。草付きも嫌らしくないし、岩質も最高。オールフリーでも5.9くらいか?季節は秋10月頃がお奨め。夏はヤバイです。
by kikunobu111 | 2009-10-09 15:57 | ・爺の登山小史
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